眠れる森の彼女

この手の誘いは何度となくあった。


金で俺を手に入れようとする女。


金は欲しい。


けど、自分を売ってまで金を得たくはない。


母親と同じに成り下がるのだけは、死んでもごめんだ。


「悪いけど、自分を安売りする女に興味は惹かれないんで」


唇だけ笑ってみせた冷酷な笑みを残し、女を置いてバイクで帰った。


どうしてこうも女ってのは欲深く汚いんだよ。


綺麗に飾り立てようが、母親と同じ浅ましい中身が詰まってる。


色彩が失せた夜の街。


一直線の車道をバイクでぶっちぎっていく。


胸糞悪い。


『椎名先輩……』


脳裏に浮かぶ吏那の姿。


何故か荒れた心情が凪いていた。