眠れる森の彼女

別に俺は普通だ。


何も変わってない。


今日も猛さんに賄いを食わせてもらって店を出る。


外に出た途端、身震いしてしまったほど、夜風は冷たくなっていた。


この分だと、帰ると0時回ってるな。


猛さん一度話し出すと止まらねぇから。


思い出し笑いをしそうになって、顔から表情が消える。


「椎名くん!」


店裏に停めていたバイクに俺を待っていたのか一人の女の存在。


はー。
怠い。


「ごめんなさい。待ち伏せしちゃって……」


わざとらしく体を震わせて、俺に走り寄る。


たぶん客だろうけど、記憶になかった。