眠れる森の彼女

異様なほど静まり返った教室内。


どこかで息を呑んだ音がした。


「手間かけさせんな」


腰を曲げ、吏那の足元に拾ってきた上履きを置く。


起き上がった時に吏那だけにわかるように、ふっと口角を上げる。


吏那はきゅっと小さな唇を噛み締め、ずっと俺を見つめていた。


「また“忘れ物“した時は俺に言え。一緒に探してやる」


吏那の頭にポンと軽く手を乗せ、俺はそのまま1年の教室から出ていった。


少しくらいは牽制になっただろうか?


それとも余計なお世話だっただろうか?


買ったばかりのミルクティーを何処にやったのか忘れるほど、俺は怒りに駆られてたみたいだ。