眠れる森の彼女

あー、もう各務以上にうるせぇな。


何で俺は自らこんな怠いことしてるんだか……。


注目を引き連れながら、廊下を進む。


1年1組の教室の扉は開いていた。


「吏那!」


後方の戸に手をかけ、入口から呼び掛ける。


机を合わせ、それぞれ群れになって昼食をとっている連中が一斉に喋るのを止めて、俺へと振り返った。


教室の中央付近にぽつんと座っていた吏那も。


幽霊にでも遭遇したように、大きな目を見開いて、俺の姿を認めた。


やっぱ露骨に一人かよ。


「吏那。お前、上履き忘れてたんだけど」