「ほんっと、いい男に成長してるわ……」


母親が俺の顔へと手を添える。


男は馬鹿な生き物だ。


この女の淫靡な魅力にはまって、朽ちていく。


「触んな」


母親の手を振り解いて、部屋へと戻る。


「クールね。女の子が放っておかないでしょ? 万威を盗られるなんて妬けるわ」


意に介さない余裕気な声色が癪に障る。


──俺はてめぇの所有物(モノ)じゃねぇ。


「くそっ……」


乱暴にベッドへ身を投げた。


胃がムカムカして吐きそうだ。


いつからだろう。


あの女に生かされてることに嫌悪感しか抱けなくなったのは。


金を使うってことに罪悪感が付き纏うようになったのは。