眠れる森の彼女

物心ついてから、母の男を何人と見てきたかわからない。


俺を可愛がる素振りを見せる奴もいれば、露骨に邪魔にしてくる奴もいた。


男に寄生して、金を吸い、枯れたら、また次の男へ。


蜜を求め、飛び、舞う、ふしだらな蝶。


──冗談じゃねぇ。


そんな金で育てられるなんて真っ平だ。


だけど、生きるのには金が要る。


何をするにも金がかかる。


こうしてシャワーを浴びるのも、ついてる電気も、歯ブラシひとつ買うのでさえも……。


金がなければ生きていけない。


何も出来ない。


ガキじゃ何の力も持たない。


「万威。帰ってたのー?」