眠れる森の彼女

「どうって……ほら、デートしたりとか、一緒に帰ったりとか」


眉を寄せた猛さんを一瞥し、食器やカップを銀色の盆に乗せて運ぶ。


「そんなの金かかるだけですよ」

「冷めたこと言うなよ。健全な男子高生だったら、女の子といろいろしたくなるだろ」

「別に」


どうでもいい。


恋だの愛だの
彼氏だの彼女だの
体のいい言葉で性欲を繕ってるだけだろ。


男女の本質なんて薄汚く、どろどろとした……そうあの女が歩んできた淫靡な人生そのものだ。


「やっぱり万威は生意気だな」


ふっ、と軽く猛さんが息を吐く。


「万威に好きな女が出来た時はどうなるのか見物だな」


俺に好きな女……ありえねぇな。


想像すら出来なくて笑えてきた。