眠れる森の彼女

「俺は……あの女に何も出来なかった」

「そんなことないと思います……」

「何かしたくても、もう何処にもいねぇ」

「……」

「俺は一人になっちまった」


吏那の肩で泣く。


みっともねぇ。


泣きたい訳じゃねぇのに、涙が止まらねぇ。


「椎名先輩は一人じゃないです」


俺の背中を撫でたまま、吏那は明瞭な口調で告げた。


「私は頼りないと思います。でも、絶対に傍に居ますから」


頼りなさすぎんだろうが。


とは言えなかった。


何もかも失った俺にとって、吏那だけが救いの女神に見えた。


吏那が居るから俺は生きていられる。


守り続けたい。


──俺だけの眠れる森の彼女。