眠れる森の彼女

ま、心配かけてるよな。


無理もねぇか。


母親を殺したのは、四十代の会社経営者の男。


痴情の縺れで、犯行に及んだらしい。


母親の色香は男を狂わせる。


狂わせすぎて殺されてどうすんだよ。


おかげで俺は天涯孤独ってヤツになっちまった。


「椎名先輩。今日は一緒に読書をしましょう」

「読書?」


スツールに座っていた吏那が俺の前にノートを置いた。


古ぼけた大学ノートが数冊。


吏那はベッドの端に腰を落とした。


「椎名先輩のお母さんが書いていた育児日記です」

「そんなもん書いてたのかよ」


信じられねぇ。


九九もろくに覚えてねぇ女だぞ。