眠れる森の彼女

ぺたぺたと素足で廊下を翔ける。


爪先は氷のように冷えきっていた。


「馬鹿。場所わかるのか?」


お兄ちゃんに腕を捕まれて、無理矢理引き留められる。


「ただでさえ吏那は弱ってんだ。風邪でも引いたらどうするんだよ」


ぶかぶかのパーカーの袖に腕を通され、スリッパを履かされた。


無言でお兄ちゃんに着いて行くと、病室の前には椎名先輩の友達が揃っている。


織原先輩と、各務先輩と、椎名先輩がナミと呼ぶ三宅先輩。


それに私のお父さんとお母さん、桜高の先生が何人か……。


みんな沈痛な表情で口を開こうとしなかった。


『皮肉なことに俺の家族はあの女しかいねぇんだよ』


椎名先輩がそう言っていたのを裏付けられているみたいだった。


「……椎名先輩のお母さんは?」

「搬送中に死亡が確認されたそうだ」