眠れる森の彼女

***


私はこのまま眠っていたい。


夢の世界は私に優しいの。


和やかで、穏やかで、誰も、何も、私を傷つけない。


目覚めたって厳しい現実が待っているだけ。


代わりに夢の世界は何もないけど……。


『また逃げるんだ?』


私の弱さを私が笑う。


『現実と向き合わなきゃ椎名先輩に会えなくなるよ』


それはやだ……。


椎名先輩は夢より幸せな現実を私に教えてくれた人だから……。


「──吏那、起きたか?」

「お兄ちゃん……」


寝覚めの目に真っ白な天井が飛び込んできて開きにくい。


お兄ちゃんの声だけは顔を見なくても判別できた。


「私……」


まだ意識が重たい。


上半身を起こそうとすると、肘に痛みが走った。


見るとガーゼが貼られている。