眠れる森の彼女

喉が痛むほど声を張り上げた。


駄目だ。


吏那は道路に飛び出しちまっている。


間にあわねぇ。


「吏那! 早く戻れ!!」


最後の一滴まで搾るように渾身の力で叫ぶ。


俺を裏切るように車道の真ん中で吏那の体は傾いていた。


……まさか。


寄りによってこのタイミングで……。


「吏那っっ!!」


鳴り響くクラクションの音。


この喧騒が聞こえないのか、吏那は眠りの世界へ引き込まれていく。


残酷にも。


安らかな顔で。


──吏那を死なせやしねぇ!!


俺は渾身の力で吏那にぶつかった。


次の瞬間には大きな衝撃が俺を襲い、俺の体は簡単に吹き飛ばされていた。


痛みさえまともに感じる間もないまま、俺の意識は消えていた。