眠れる森の彼女

吏那……。


心臓に不穏な音がした。


嫌な予感がする。


予感で終わると思えないほどリアルに警鐘が響く。


今、吏那は何処に居る?


「吏那……!」

「おい、椎名くん!」


警察官の輪を掻き分けるようにして走り出す。


早く、早く。


吏那の顔が見てぇ。


この焦燥を払い除けたい。


嫌というほど増幅する寒気が俺ごと蝕んで食い潰されそうだ。


「!」


車道の向こう側。タクシーから降りている吏那の姿を見つけた。


「吏那!」


俺の叫びに気づいたのか、吏那がこちらを見遣る。


「椎名先輩っっ!!」


泣きじゃくっていたんだとわかる声の震え方だった。


何で吏那が通報したのかわからねぇ。


でも、俺を助けたのは吏那だろう。


くそっ。


野次馬が邪魔だ。


吏那のところまで真っ直ぐ走れねぇ。


「椎名先輩っ!!」


吏那は道路を渡って、こちらに走ってこようとしている。


見るからに平静さを失っていた。


「馬鹿か! そこで待ってろ!!」