ラストオーダーは21時30分。


閉店は22時。


長居していた客がやっと店を出た時には22時30分を回っていた。


俺が最後の客が座っていたテーブル席を片付けていると、キッチンから顔を覗かせた猛さんが声をかけてきた。


「いや、万威って見てくれ抜群だろ。オマエ目当ての客がたくさん居るのも知ってるし」

「その分、歩合で給料あげてくれますか?」

「吐(ぬ)かせ。調子にのんな」


目線は俺より10センチほど下の170そこそこだが、たまに圧倒されそうなほどデカく感じる。


人気がある若手イケメン俳優に似ていると噂の爽やかな容貌から、そこはかとなく漂う元ヤン臭を客は気づいているのだろうか?


「万威は客の誘いを全部軽くいなしてんだろ。実際どうなんだよ?」