眠れる森の彼女

狙われてんのは俺か。


この男、確かどこかで……。


「コロシテヤッタ、コロシテヤッタ……」


口角に泡をためて、狂ったように呟いている。


ああ、思い出した。


家で母親とヤッてた男の一人にこんな狸顔のオヤジが居たかもしれない。


「……コロシテヤル、オマエモコロシテヤル……」


ナイフの切っ先を俺に向けて突進してくる。


殺意で濁った目は俺だけを捉えていた。


どうやら話が通じる状態じゃないらしい。


「ちっ……」


何なんだよ、ちくしょう。


俺は男の手元を正確に狙って蹴りを見舞う。


「ぎゃあっ!!」


男が無様な声を上げる。


ナイフが地面を這った。


今度は男が俺に飛び掛かろうとしてきた。


もう一度、構えの姿勢を取り、足を振り上げようとした時、

「そこまでだ」

雪崩れ込むように数人の警察官が男を取り押さえた。