眠れる森の彼女

椎名先輩を……。


「……万威をだずげでぇぇ!!」


今際の絶叫だったのか、椎名先輩のお母さんは事切れたように動かなくなった。


いつの間に泣いていたのか私の頬は涙に塗れている。


これは悪い夢……だよね?


悪夢なんてまだ生易しい。


一瞬で天から谷底まで叩き落とされる絶望的な現実。


椎名先輩が殺される……?


椎名先輩が?


冗談だろうと思いたい。


じゃあ目の前に広がるこの惨劇は何?


確かに死んでいる。


椎名先輩も殺される……?


私は生まれたてのバンビのように覚束ない足で立ち、外へ飛び出した。


やだ。やだ。やだ。


椎名先輩が殺されるなんてやだ……!


何で椎名先輩は携帯を持ってないの?!


私は全力を更に振り切るように走りながら、警察に電話をかけた。


椎名先輩の家でお母さんが刺されたこと。


逃走中の犯人が椎名先輩も狙っていること。


うまく説明できていたかわからない。