眠れる森の彼女

吏那は繋がれていた手に更に片手を重ねてきた。


俺が視線を吏那に移すと、一つ大きく頷いてみせる。


「中学生の頃。私の睡眠障害がわかって、何もかも嫌になった時がありました。
何で私ばっかり……って被害者意識が強くて、逃げだしたいとばかり思ってました。何でこんなにつらいのに私は生きてなきゃいけないんだろうって……」


吏那の手は寒空の下で冷えきっていた。


「お母さんに『私、死んじゃってもいいかな?』って言ってしまったことがあったんです。
お母さんは泣いてました」

「……」

「後悔しました。
家族は何をしても私を許してくれて愛してくれるんだって自惚れていたんです」

「俺は家族に愛されなかったけどな」


自嘲気味に呟く。


「椎名先輩みたいな奇跡的な人、どこにも居ません」