眠れる森の彼女

吏那は頬を上気させたまま、俺を心配そうに見つめている。


ただ、不安げなその目は俺に“大丈夫“だと訴えかけている。


少しの沈黙を守った後、俺は観念し、口を開いた。


「あれ。俺の母親」

「びっくりしました」

「だよな」

「余りにも若くて。それに今まで見た女性の中で一番美人だったので。
少し椎名先輩に似ています」

「冗談だろ」


わかってんだよ。


俺の顔は疑う余地がないくらい母親譲りだ。


「……吏那に知られたくなかった」


あの男にだらしない女が俺の母親だと知られるのは全裸を見られるより恥だ。


「……何で、ですか?」

「俺があの女を嫌いだからだ」

「……」

「皮肉なことに俺の家族はあの女しかいねぇんだよ」


誰かに母親のことを吐露したのは初めてだ。