廊下を飛び交う浮かれた同級生たちの声が耳障りで仕方ない。


いいよな、オマエらは。


明日の食い扶持の心配なんて一度もしたことねぇだろ。


スニーカーに履き替え、外に出た。


すると、校門に向かう生徒たちがちらほらと散らばっている中で一人の女生徒に目が止まる。


──吏那だ。


やましいことでもあるように俯き、肩身が狭そうに小さな歩幅で進んでいる。


一人で歩く細身な吏那の背中は、下校の風景の中に素直に埋没していた。


ひとたび風が強く吹けば、ふわりと舞い上がり消えてしまいそうだ。


あれだけ下を向いて歩いていれば、一方的に女好きな各務の可愛い女子レーダーにひっかからないのも無理はない。