眠れる森の彼女

何なんだ、いきなり。


「紅月さんは幸せ者だね」


織原が緩く笑う。


どうして今ここで、そんな話になるのか訳がわからない。


それより。ネクタイピンだ、ネクタイピン……。


すぐにでも渡してやりたかったのに、見つからないまま時間だけが経ち、3日間の期末考査を迎えていた。


午前で終了するため、吏那と俺は美術室で変わらず弁当を食べ、それぞれ時間まで翌日の科目を勉強することにした。


元々静かな美術室だけど、ほぼ無人と化した校内では更にひっそりと感じる。


シャーペンを走らせる音だけが響く。


俺は正面で教科書に向き合う吏那にそっと視線を送った。