眠れる森の彼女

ヤバい。


大好きは反則だろ。


どんな殺し文句だ。


「吏那……」


ゆっくり顔を近づける。


鼻と鼻がぶつからないように右へ傾け、吏那の唇に唇を触れ合わせた。


僅か一秒にも満たない触れるだけのキス。


それなのに恐ろしいほど俺の胸を満ち足りた気持ちにさせた。


二度、三度と、吏那の柔らかな唇を堪能したいが、今はこれだけにしておく。


恥ずかしそうに伏し目がちになっている吏那を見下ろす。


どれだけ俺の心拍を乱してくれるのかと問い詰めてやりたいくらいだ。


「遅刻だけど、学校、行くか?」

「……はい……」


やっと、吏那と通じ合えた。


やっとだ。


──二度と吏那を離さねぇ。


この時は固く信じて疑わなかったのに。


非情にも二人を引き裂いたあの事件は音も立てずに刻一刻と忍び寄ってきていた。