眠れる森の彼女

俺の知らない少し拗ねた甘えた口調だった。


やはり家族には心を許しきっているのだろう。


「お兄ちゃん。お母さんに今日も休むって伝えて」


扉越しの吏那の頑なな声に、宗志さんはややオーバーに肩を竦める。


「やっぱり俺じゃだめだな」


宗志さんは苦り切った顔で小さく告げ、俺の肩に手を置いた。


バトンタッチというわけだろう。


俺は小さく息を吸った。


「──吏那……」


呼びかけてみる。


聞こえていないはずはなかったけど返事はない。


その代わりにガタンと大きな物音が鳴った。


「……し、椎名先輩?」

「あぁ。久しぶりだな、吏那」