眠れる森の彼女

宗志さんの言葉が胸に広がった。


──吏那はその瞬間、世界に対して無防備になる。


「例えば踏切を渡っている途中で眠ってしまったらどうなると思う?」


宗志さんに問われて、事の重大さが鉛のようにのしかかってくる。


「階段を上がっている途中で眠ってしまったら……」


合点がいった。


いつも吏那が不安そうにしていた理由。


いじめられていただけじゃなかった。


「間違いなく死ぬ。常に吏那はいつ襲うかもしれない睡眠の恐怖と戦っているんだよ」


宗志さんの声は陰っている。


憤りが滲み出ていた。