眠れる森の彼女

吏那が“おかしい“ことに気づいたのはちょうどこれから冬本番を迎える木枯らしが吹く頃だ。


英語の授業でスピーチ大会が行われていた時のことだった。


吏那はスピーチを発表している最中に忽然と倒れた。


それはもう中学に救急車が呼ばれるほどの大騒ぎだったらしい。


俺も講義を抜け出して病院に駆け付けた。


吏那が倒れたまま目覚めないと聞いたから、命に関わるんじゃないかと生きた心地がしなかったな。


──しかし、吏那は眠っているだけだった。


そこで初めて医師から吏那の睡眠障害について聞かされたんだ。


「眠るだけなら大したことないって思うよな?
違うんだよ。寝るってことは、その瞬間から、世界に対して無防備になるってことだ」