眠れる森の彼女

宗志さんは煙草を唇に銜え、器用に片手で先端へ火を点す。


運転席側の僅かに開けられた窓が車内の熱を一気に冷やしてしまった。


「寒いか?」

「いや、平気です」


むしろ暖房で頭が熱くなっていたから冷気が心地よいくらいだった。


「参ったな。もっとちゃらんぽらんな男だったら良かったのに、」

「はい?」

「“椎名先輩“の粗を探しても見つからない」


宗志さんに俺の粗探しをされてたのかよ。


気づいてはいたけど、宗志さんは吏那が大事なんだろう。


いわゆるシスコンってやつか。


吏那みたいな可愛い妹が居ればそうなるものなのか。


「万威くんは吏那のことが好きなんだってな」