眠れる森の彼女

引き裂くような冷え込みに思わず身を震わせた。


ただ冬の夜は嫌いじゃない。


からからの澄んだ空気が夜の闇を引き立たせている。


まだ30分には早かったが、宗志さんの兄は路肩に車を駐車し、俺を待っていた。


吏那を乗せていた高級セダンに今は俺が乗っている。


車内の空気は酸素が薄いんじゃないかと思うほど、重々しい。


「この時間じゃ飲み屋くらいしか空いてないか。さすがに高校生の制服着たガキを連れていけないし……」


さらっと癪に障る物言いをする。


「此処で構いませんけど」


相手のペースにはまらないよう丁寧に返した。


「適当に流すか」