眠れる森の彼女

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桜山高の利点は駅に近いこと。


ステーションビルにはコンビニも本屋も雑貨屋も入っているし、通学には最適だ。


それは別の形で俺の利点でもあった。


生徒はほぼ真っ直ぐ校門から駅に吸い込まれてしまうため、反対方向へ少し歩くだけで生徒にほとんど会わなくなる。


学校から徒歩5分の地にあるコンビニの駐車場にバイクを停めていても気づかれていない。


ちなみにコンビニのオーナーには何故か気に入られ、バイク駐車の許可も特別にもらっていた。


俺のバイク通学は織原くらいしか知らないはずだった。


放課後、バイトに行くためにコンビニへバイクを取りに向かうと、傍に一人の男が立っていた。


思わず息を呑む。


見覚えがある。その秀麗なスーツ姿の男は、

「椎名 万威くんって君か?」

吏那の兄だった。