眠れる森の彼女

「謎掛けでもしてんのかよ」


いちいち考えるのが怠い。


「自覚ないかな。紅月さんと会ってからの椎名は前と違ってた」


ナミの声で吏那の名前が話されると、やはり吏那の存在は幻ではなく、現実味を帯びた。


「椎名は大人びててクールでかっこよくて誰のものにもならない」

「いきなりどうした?」

「それが文化祭で窓ガラス割って停学くらうわ、紅月さんを好きだって叫んじゃうわで……」

「……悪かったな」

「ううん。今のほうが椎名は人気があるんだよ」

「は?」

「椎名一人で泥かぶったんでしょ?
紅月さんを助けたんでしょ?」

「……」

「そういうのがわからないほど、みんなだって馬鹿じゃないし」