眠れる森の彼女

ナミが俺の肩に手を置く。


俺は返事の代わりに眼球だけナミに向け、すぐ戻した。


ナミの溜め息を鼓膜が拾い取る。


「各務や織原くんが心配してたよ。椎名が前にもまして無気力だって」

「前からこんなもんだろ」


あらかじめプログラムが設定されたロボットのように、時間が来れば登校し、授業を受け、バイトに行き、一日が終わる。


抗いもせず、淡々とそつなく目の前のことを熟す。


そうだ。俺はこうだったんだ。


学校は旨味もなければ苦味もない、刺激もない。


浪費しかしない場所。


それだけだった。


「違うよ。……ううん。同じだったけど違った」