眠れる森の彼女

ストレートで不器用な謝罪はありのままの気持ちが溢れ出ている。


俺は両足を揃えたが、振り返りはしなかった。


「紅月さんは本当にずるいと思う!
私たちは特進コースで必死に勉強してるのに、紅月さんだけは授業に出なくても居眠りしてても怒られないし、ヒイキばっかり!!」


いつかナミから言われた台詞が脳裏を掠めた。


『そうそう。紅月さんの父親が名の知れた弁護士みたいで。過去、桜高も陰でお世話になったこととかあるんだって。
そのおかげか授業をサボっても、居眠りしても、教師は誰も怒らない。体育も見学しかしない。
ヒイキされすぎで顰蹙を買ってるって1年の後輩たちから聞いたよ』