教室に入るのに緊張するほど可愛げのある性格はしていない。


懸念なのは吏那が俺を見てどう反応するかだとか、勝手な行動をして拒絶されるんじゃないかだとか、で。


「おっ! 椎名っちー! 変わってねぇなあ」


俺の入室に教室の空気が一変したのは何となくわかっていた。


それでもいつもと変わらず各務が脳天気な態度で俺の席までやってくる。


「一週間で変わるかよ」

「5日も休みやがってずるいよな」

「馬鹿か。課題だされまくって普段より勉強した」

「万威。謹慎お疲れさま」


織原が後ろから肩に手を置く。


万人に効果的な柔軟な笑みで。


「手の怪我は大丈夫か?」

「別に何ともねぇよ」