教師にまで色目を使う母親。


『いや。しかし……。本人が認めていますので……』


教師も教師で鼻の下を伸ばして、見事にあの女の術中にはまりわかりやすく狼狽していた。


教師も、ただの男だな。


俺は冷然と、目の前で繰り広げられているくだらない寸劇を網膜に映していた。


『万威。駐車場そっちじゃないわよ』

『今から仕事だろうが。俺はバイクで帰る』

『えー? たまには万威を助手席にのせてドライブしたいんだけど』


その日の帰りはもちろん母親とは別々だった。


自分の息子が停学になろうと説教の一つもしやしないで、この調子。


余計な手間をかけさせた礼も詫びも言えなくなる。


そして、謹慎が明け、久しぶりの登校日を迎えた。