眠れる森の彼女

「これは、いったい何の騒ぎだ!?」


廊下にまで収まりきらないほど集まった人垣を掻き分け、教師が2人血相を変え教室に飛び込んできた。


「椎名! お前、血が出てるじゃないか!」

「窓ガラスが割れてるのはどういうわけだ」

「喧嘩か? 誰か説明しろ」


太い声でがなる教師が面倒くさい。


ひそひそと波紋のように観客にざわつきが広がっていく。


俺は短く嘆息した後、

「俺がむしゃくしゃしてたんで、窓を割っちまっただけです」

と教師の前に進み出た。


「ドウモ、スミマセンデシタ」


面食らう教師に、感情が消失した声で頭を下げる。