眠れる森の彼女

周りの意識が俺にだけ向けられているけど意に介しはしない。


目配せしあい、顔色が悪くなっている女たちの前まで進む。


そいつらの前で足を止め、無表情でじっくり見つめた。


一人、二人……五人か。


とりたて特徴もない普通の女たちだ。


俺から視線を外さないまま顔が赤くなったり、青くなったりと忙しい。


ふ、と口角を不敵に上げてみせた。


揃いも揃って陶然とした表情をお披露目してくれる。


──あぁ。もう死ぬほどうぜぇ。


衝動のまま力任せに腕を後ろに振り上げる。


「きゃっ!!」


教室の窓が割れた。


各所から悲鳴が上がる。


破片で切ったのか俺の拳からは血が滴り落ちていた。


マグマのように煮え滾っている怒りが外へと流れ出ているようだ。


「ご立派な御託を並べるつもりはねぇけどな」