眠れる森の彼女

吏那は惚けたように目を瞬かせ、絡まった両腕が自然と緩くなる。


「止めんな」


1年1組の教室は前も後ろも戸が開いていた。


確かに文化部に使用されているわけでもなく、休憩用に使用されているようだ。


各自が残り僅かとなった文化祭終了までの時間を持て余していた。


俺が教室に入ると、歓談がぴたりと止む。


ゆっくりと視線を走らせていく。


この教室内だけ有刺鉄線が張り巡らされているように緊張感が広がっている。


「椎名先輩っ!」


俺の背中に追いついた吏那を見た瞬間、顔を引き攣らせた女の集団が居て、直感的に悟った。


──てめぇらかよ。