眠れる森の彼女

吏那を中央の職員用デスクに押し倒す。


「し、椎名先輩……?!」


吏那の瞳が恐怖と困惑を映して、俺を見上げている。


机に散らばる艶やかな髪。俺の手で縫い付けたたおやかな腕。


どろりとした黒い感情が思考を塗り潰していく。


「……冗談……ですよね」

「冗談……なわけねぇだろ」


目を細め、顔を吏那に近づけていく。


「いや……! 椎名先輩やめっ……」


俺の下でもがく吏那。


精一杯だろうが非力すぎて、無駄な抵抗に過ぎない。


「椎名せんぱっ……」

「静かにしてろ」


吏那の耳元で命令するように囁く。


抵抗していた腕の力がぴたりと止んだ。


「──人、来ちまうだろうが」