眠れる森の彼女

口調と目つきが鋭利になったのが自分でもわかる。


「……何でもありません」


吏那が目を逸らす。


“ああ。そうかよ“と、到底頷けるものではない。


「──来い」

「し、椎名先輩っ?!」


吏那の細い腕を引っ張り、ぐんぐん廊下を進んでいく。


ただならぬ俺の様子に、面白いほど人は避けてくれた。


頭の中を支配してるのは憤怒と焦燥。


吏那を狭い教科準備室に連れ込む。


中から鍵をかける。


通常の教室より面積が小さく、天井までのキャビネに資料がぎっしり詰め込まれている部屋。


カーテンは閉まり、湿っぽい匂いが室内に充満していた。


「きゃっ……!」