眠れる森の彼女

***


ヴァンパイアの衣裳を脱ぎ制服に着替える。


そういえばクラスTシャツを文化祭で一度も着ていない。


デザインも悪くないし、パジャマ代わりにでもするか。


適当に衣裳を畳んで、更衣室用の教室を出た。


「?」


吏那が居ない。


辺りを見回す。


終了時刻が迫ってるからか一般客が減っていた。


「椎名先輩……」


か細い声が聞こえて振り返る。


「吏那」

「すみません。お手洗いに行っていたんです……」


ほんわかとした笑みで俺を見上げる吏那。


その違和感と額に流れる汗に気づき、眉間に力がこもった。


「何があった?」