眠れる森の彼女

吏那が携帯を両手で構える。


「俺だけ撮っても仕方ねぇだろうが」

「あ……」


それを難無く取り上げて、吏那の肩を引き寄せた。


わたあめのように軽く、簡単に吏那と接近する。


「どうやって撮るんだよ。これ」

「えっ、と……」


携帯電話を持っていない俺にはハイテク機器を使いこなせる芸当は持ち合わせていない。


近づいたまま、吏那に手渡すと、

「カメラを内側に切り替えて……」

ぼそぼそ言いながら画面をタップしている。


いつの間にか詰まっていた吏那との距離。


近くで見ても毛穴一つない柔らかそうな頬。


餅みてぇだな。


「この画面の丸いボタンを押すと撮れます」