眠れる森の彼女

お盆にはオレンジジュースが二つグラスに乗せられ、からころ氷と擦れ合い軽やかな音を奏でている。


朝から酷使されてるはずの織原は涼やかな笑みを象った。


「驚いたな。万威それ似合うね」

「結構、喋りにくい。すぐ外す」

「そうか。次のシフトの時は俺もつけようかな」


織原は俺に盆を渡すと、

「よろしく、万威」

と俺の耳元で囁いた。


「女が来るんじゃねぇのか?」

「来ないよ。彼女はバイト入ってる。それに高校の文化祭はね。俺は各務と一通り回ってくるよ」

「俺の腰ポケットにいろいろ無料券が入ってる。使えよ」

「紅月さんと使わなくていいの?」

「もう食ってきた。やたらとその辺りでくれたから、全部やるよ」