眠れる森の彼女

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午前からシフトに入っている織原のおかげ(せい)か、俺が当番の頃には捌ききれないほどの客がハロウィン喫茶に行列を成していた。


「お。吏那ちゃんとデート羨ましいリア充マジ爆発しろの椎名っちだ」

「すげぇな。これ」


俺が店内に入ると、ミイラ男こと顔面を包帯でグルグル巻きにして、接客中の各務が出迎えた。


「いやーっ! 椎名くんだ!」

「かっこよすぎて死ねるんだけど」


ヴァンパイアの衣裳に、女子に渡された牙を装着した俺はシフトを変わるべく厨房に向かった。


女の声って、どうしてこうも甲高いのか耳障りだ。


「織原。それ、俺が運ぶ」