吏那の小さな手をとろうとした矢先、

「あっ。椎名! 来てくれたの?」

ナミが俺たちの所までやって来た。


「別に覗いただけ」

「投票していきなよ! 自分に入れてもいいんだよ?」

「しねぇよ」


紺色のクラスTシャツを身につけているナミは、完全に文化祭モード。


無理矢理結んだポニーテールにはでかい向日葵の花がついていた。


ナミは俺の隣に居る吏那を一瞥した後、

「椎名のヴァンパイア姿、後で見に行くから。
昨日もやばすぎるってみんな騒いでたよ」

と、まるで空気のようにその存在に触れなかった。


「別に俺を見る必要ねぇだろうが。ナミ……さん」

「は?」