「……甘いです」


吏那は顔を赤らめて、ふっくらとした唇についた生クリームをぺろりと舌で舐めとった。


「そりゃクレープだからな」


その仕種が俺の胸を叩いて、視線を前へ向けた。


人だらけで歩きにくい。


しかも、やたらと見られている気がする。


──見世物じゃねぇって。


「椎名先輩って血まで甘そうですね」

「試してみるか?」

「え……?」


生真面目な吏那は全てを真に受ける。


「冗談。血を吸うのは俺だし」

「あ、椎名先輩はヴァンパイアですしね……」


今は違うけど。


また、あの衣裳を着るのかと思うと億劫になってくる。


とにかくマントが邪魔だ。


「あそこ、賑わってますね」