「きゃっ……」


驚く吏那と同じタイミングで自然と空に目を向けた。


続けざまに二発、三発と大輪が宵空に咲き誇る。


「花火……ですね」

「知らなかった」


眼下ではグラウンドに生徒が溢れ出てきて、花火が一発打ち上がるごとに喝采が起こっている。


「きれい……です……」


目線を下げると、流星のように鮮やかな光の粒が吏那に降り注いでいた。


その表情がせつないほど綺麗で、引き付けられて、目が離せない。


「明日が……楽しみですね」

「そうだな」


吏那の手がいつの間にか離されていたこと。


吏那が笑っていてもどこか憂いを香らせること。


吏那の傍に居ると呼吸さえ妨げるこの感情が苦しくても、新鮮で、手放したくないと思った。