視線を遣ると、吏那の表情には緊張の色が見え隠れしている。


「……前に椎名先輩に言えなかったことなんですけど……」

「ああ」


やべぇ。
吏那の緊張はいつも俺に伝わる。


違う。


俺自身が吏那に何を言われるのか驚くほど身構えている。


「しょうもないことなんです」

「……」

「余りにも私のわがままで、」

「……」

「恥ずかしくて、椎名先輩に言えなくて、気にしないでほしいと言ったんです……」


吏那は薄い瞼を伏せた。


何も飾っていない長い睫毛がほんの僅か揺れている。


「……したから」