吏那は手摺りに両手を乗せ、隣の俺を見上げた。


「吏那も見たいのか?」

「見たいです」

「何が面白いのかわからねぇな」


たった10分、店に立っただけで来日して成田空港を歩くハリウッド俳優かってくらい写真を撮られた。


俺なんてその辺りにいつでも転がってんのに。


「椎名先輩はわかってないんです。
自分がどれだけ周りの人に影響を与えているか……」


吏那が正面を向き直す。


そういえば吏那の横顔は余り見たことがなかった。


冬の到来を予感させるほんのり冷ややかな風が吏那の髪とスカートの裾を軽やかに揺らしている。


会話がなくても不思議と気詰まりはしない。


「……椎名先輩」

「ん?」