俺は終了直前10分ほど店頭に立たされるだけで済んだ。


それが巧みに飢餓感を煽り、明日はもっと来客を見込めそうだと、ハロウィン喫茶を取り仕切る敏腕な女子たちはほくそ笑んでいた。


「──意外と疲れるもんだな」


体育館では中夜祭が行われている。


何組かバンドやダンスをやってるチームがステージに上がって、ライブハウス並みに盛り上がり揉みくちゃにされると聞いている。


明日もあるのに元気なものだ。


俺と吏那は中夜祭に出ずに、非常階段に居た。


昼の賑わいが嘘のように引いた校舎。


5階と4階の中間地点にある踊り場。


宵闇の薄い紺色が目の前に広がっていた。


体育館から漏れた重低音と歓声が遠くに聞こえる。


「明日は私も見られますか? 椎名先輩がヴァンパイアになったところ」