眠れる森の彼女

目玉の姿がないことに不平をたれる女にも、

「ごめんね。万威はこの時間に入っていないんだ」

と、執事姿に狼の耳と尻尾を装備した織原の登場で文句なく静まったらしい。


「これもいい!」

「明日も来ます!」

「織原くん素敵っ!」

「ははっ。ありがとう」


カシャカシャと自分に向けられる携帯に、ひらひら手を振って柔らかな笑みを浮かべて答えている織原。


あれはプロだな。


暗幕を垂らして作られた簡易バックヤードで待機していた俺はまた織原に一目置いた。


「椎名くんのヴァンパイア姿はプレミアものだかんね」