眠れる森の彼女

吏那の怖いほど透き通った目が驚きと不安と痛みを孕んで、俺を捉える。


「……悪い」


俺はこんな細い腕をどれだけ本能のまま強い力で掴んでしまったのか気がついて咄嗟に離した。


「……椎名先輩……」


言葉にしなくても吏那が俺に後ろ暗そうなのは先にわかった。


普通じゃない俺と吏那の様子に周りのやつらがざわめく。


ああ。くそっ。
邪魔だっつーんだよ。


吏那はギャラリーの地獄耳に入らないよう、

「昼休みは先生に資料のホチキス留めを手伝わされていたんです。何も言わなくてすみませんでした」

と、俺が聞く前に小さく言い訳をした。


──「嘘だろうが」


そう言えなかった。


吏那は顔に感情を素直に出す。その割に隠そうとする。


けど、不得手。横に黒目を逸らした吏那がひどく苦しそうに見えた。