眠れる森の彼女

俺も創作や二次元に興じられるタイプじゃないから、少しは似てるのかもしれない。


素直にフィクションを楽しめりゃいいのに。


「椎名先輩のポスター。あちこちで見ます」

「あー……もう知らねぇわ」


机に突っ伏した。


思い出しちまう。


各務に吏那を構われることにムカついて衝動的に怒鳴った愚かな自分を。


吏那の存在を意識して、うまく見られねぇ。


「……私、椎名先輩を怒らせてしまいましたか?」

「あ?」


思わず顔を上げ、眉を歪めた。


それだけで人相がきつくなる俺に対して、吏那はめげずに向き合ってくる。


円い大きな瞳を珍しく半目に細めて。


「……さっきから、何だか椎名先輩の様子がおかしいです」